まちなか活性化のきっかけになるか!?地方の寂れたまちなかの挑戦ーISESAKI和菓子ストリート | 合同会社きらりすと

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まちなか活性化のきっかけになるか!?地方の寂れたまちなかの挑戦ーISESAKI和菓子ストリート

#まちづくり#和菓子#和菓子イベント#地域おこし#地域活性化#官民連携

あなたの住むまちなかは生きていますか?

群馬県伊勢崎市の本町通り、かつては人通りも多く、商店が並んでいて活気があった。しかし今は、昼間には人通りもなく、商店もシャッターが閉まっていて閑散としている。昔ながらの商店がホストクラブなどのいわゆる夜のお店に変わってしまったところも多く、通り全体としてはまるで統一感もなくカオスだ。

この状態は、伊勢崎のまちなかに限ったことではない。日本全国の地方都市で同じような光景が見られる。かつて地域の中心だった商店街が徐々に活気を失い、人々の足が遠のいていく。これは地方でよく見る光景ではないだろうか。

地方のまちなかは寂れ滅んでいくのか?

地方活性化や、まちなか再生の様々なプロジェクトに関わり始めてもう8年ほどになる。どの地域のどのプロジェクトであっても、「まちなか活性化」を掲げたプロジェクトは、実際に関わってみるとかなり厳しい。何が厳しいかというと、一言で言えば、「対象地域(まちなか)の住民や商店主がまちなか活性化に乗り気ではない」に尽きる。

まちなかに限らず、人間は、「変わりたくない」「変えてほしくない」とよっぽどでない限り変化を嫌う生き物なのだ。だから、いざプロジェクトを始めようとする時、その地域の方々からの批判に合う。「どうせ一時的にプロジェクトやったって無駄。この地域は変わらないよ」と。

該当地域の人たちに反対されて、意味ないと言われながらプロジェクトを動かすのだから、プロジェクトメンバーのメンタルもやられてしまう。そして、プロジェクトの途中でメンバーは少しずつ減っていき、最終的には情熱の火が残る数人でメンタルをすり減らしながら細々とやっているというのが現状ではないだろうか。

ただ、プロジェクトを進めていく上で、少し明るい兆しが出始めると、プロジェクトへの味方も変化してきて、協力者が増えたり、そのまちなかエリアの店主たちが協力的になってくれたりしてくるから不思議なものだ。きっとみんな、発言とは裏腹に、心のどこかで本当は、楽しいことやワクワクすることを求めているに違いない。

「楽しさ」が変化を生み出す−ISESAKI和菓子ストリートの挑戦

伊勢崎市には、まちなかイノベーター(地域おこし協力隊)という人物がいる。地域おこし協力隊とは、都市地域から地方に住民票を移し、地域おこし活動を行いながら、その地域への定着・定住を図ることを目的とした取組を行う人物だ。

その地域おこし協力隊の一人である皆瀬勇太さんは、自己紹介でも「ぶっ飛んだことが大好き」と言っている通り、これまでにもオーストラリアで現地観光ガイドをしたり、「石川トランプ」を作成・販売したり、全国的に珍しいきな粉ビールを商品化したりと、ユニークな経歴の持ち主だ。そんな皆瀬さんから「一緒に和菓子をテーマにしたイベントやりませんか?」とお声がけいただき企画したのが、この「ISESAKI 和菓子ストリート」だ。

2024年10月に第1回目を開催し、第2回目を2025年3月30日(日)に開催することが決まっている。伊勢崎のまちなかには、老舗の和菓子屋さんが多く存在するのが特徴の一つでもある。その和菓子屋さんの存在をフックに食べ歩き&街歩きできる企画を立案した。

伝統と革新が融合するイベント内容

「ISESAKI 和菓子ストリート」は単なる和菓子巡りにとどまらない工夫がある。参加者は2,000円のチケットを購入することで、6店舗の和菓子屋それぞれの特別和菓子(イベントだけで提供してくれる和菓子)と交換できるチケットと、共通チケット(どの店舗でも使用できるチケット)2枚の計8枚を手に入れることができる。

また、和菓子と親和性の高い「着物(伊勢崎銘仙)」の要素を掛け合わせることで、街歩きに非日常感や特別感を付与。「着物de街歩き」企画では、伊勢崎銘仙のレンタルと着付けサービスを提供し、参加者は着物姿で街を歩くことができる。

さらに、抱き合わせ企画として「伊勢崎銘仙おしゃべり会」では、着物や伊勢崎銘仙に興味ある人たちが集まり、その魅力を共有するトークイベントを開催。県重要文化財に指定されている茶室「觴華庵」での抹茶体験など、和の文化を多角的に楽しめる内容となっている。

第1回目の開催時には、伊勢崎のまちなかに伊勢崎銘仙を着た人が溢れ、和菓子屋さんの前にはそのイベントでしか味わえない限定和菓子を求める人で行列ができるほどの盛況ぶりだった。参加者は約240人、伊勢崎銘仙着付け者数は14人(男性5名、女性9名)を数え、参加者の年齢層も10代から70代以上まで幅広く、地域の魅力を多世代で共有する場となった。
<以下の写真は第1回目の様子>

成功の秘訣は「楽しさ」の共有

第1回開催の成功を振り返ると、その秘訣は「楽しさの共有」にあったと言える。参加者からは「楽しかった」という声が多く聞かれ、和菓子屋店主からも「こんなに多くの方が来てくれるとは思わなかった」「お客様に喜んでもらえてよかった」といった前向きな感想が寄せられた。

特筆すべきは、参加者の年齢層の広さ。小さなお子様から80代くらいの方まで、一人参加も家族連れ参加も、バリエーション豊かな参加者で賑わった。こうした多様な層の参加は、イベントの魅力の証左と言えるだろう。

まちなか活性化のKPIはどこに設定するか?

地域活性化関係のプロジェクトを成功させるためには、適切なKPI(重要業績評価指標)の設定が欠かせない。注意してほしいのは、「賑わいの創出」というふわっとした目的でプロジェクトを実施すべきではないということだ。では、KPIはどこに設定すればいいのか?

まず、該当エリアの課題点や問題点を挙げ、その解決にマッチする具体的な数値目標を設定することが重要だ。例えば、「ISESAKI 和菓子ストリート」では、次のような数値目標を設定している。

  • まちなか巡り参加者数:500人(第1回目開催時は240人)
  • セットチケット販売数:250セット
  • 伊勢崎銘仙着付け者数:20人(第1回目開催時14人)

さらに実行委員会メンバーの意識として、「イベント開催日のみ盛り上がればよしとするのではなく、本イベントを通じてまちなかの魅力を感じてくださった方々が、これから先も末永くまちなかを愛し、足を運んでもらう、そんなきっかけを作っていきたい」という長期的視点も持っている。

このように、単発のイベントに終わらせず、「まちなかの滞在時間を一人あたり30分増やす」「再訪問率を20%向上させる」「空き店舗の活用件数を年間5件増やす」など、具体的かつ測定可能な目標を設定することが重要だ。そして、それらの目標達成のために、地域住民や事業者、外部の専門家など、多様な立場の人々を巻き込んでいくことが成功への近道となる(詳しくはこちらの記事へ:「地域活性化やまちなか再生はなぜ難しいのか、賑わいの創出を目標に掲げてはいけないワケ」)。

続けることの価値−第2回開催への期待

「ISESAKI 和菓子ストリート」は第2回開催に向けて、第1回の経験を活かした改良点も検討されている。たとえば、和菓子作成数量や行列への対応、チケット予約数の事前共有など、参加店舗とより緊密な連携を図っていく予定だ。

また、イベントの魅力をさらに高めるため、「和」に関する商品を持つ店舗(カフェ等)にも参加を呼びかけ、より多くの店舗を巻き込んでいく。これは単にイベント規模を拡大するだけでなく、まちなか全体の活性化につながる重要な取り組みと言えるだろう。

まちなか活性化は一朝一夕に実現するものではない。しかし、「ISESAKI 和菓子ストリート」のように、地域の特色を活かし、「楽しさ」を共有できるイベントを継続的に開催することで、少しずつ変化が生まれてくる。そして、その小さな変化が積み重なることで、やがて大きなうねりとなり、まちなかに新たな息吹をもたらすことになるだろう。

地方の寂れたまちなかの挑戦は、まだ始まったばかりだ。しかし、その挑戦が地域の人々の「心のどこかで本当は、楽しいことやワクワクすることを求めている」気持ちに火をつけることができれば、まちなか再生の可能性は無限に広がっていく。

<第2回ISESAKI和菓子ストリートチラシ>

この記事の著者

合同会社きらりすと 代表 内原絵美

千葉大学法経学部総合政策学科卒業。群馬県出身。
製薬会社・広告代理店での経験を経て、2015年にファッションブランドを立ち上げ起業。「第2回創業スクール選手権」にてビジネスプランが最優秀賞「経済産業大臣賞」を受賞。ビジネスの傍ら、地方創生やまちづくりにも携わる。
2020年に女性起業支援プロジェクト「Lady★Go」を行政と共同で立ち上げ、全体統括・企画・プロデュースを担う。
現在は、大手企業へのPR戦略立案やライティング、地域資源を活用した新規事業開発など、幅広いコンサルティング事業も展開。全国各地で起業・キャリアに関する講演活動も精力的に行っている。

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