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女性起業がうまくいかない理由とは?経営知識のなさゆえの間違った行動力、そして至る所に垣間見える甘え

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「好きなことを仕事に!」「自分らしく働こう!」「育児と両立できる理想の働き方」。こうしたキャッチフレーズに惹かれ、近年、女性の起業が増加傾向にあります。SNSを見れば「月収7桁を達成しました!」「起業半年で年商1000万円突破!」といった華やかな成功例が溢れています。しかし、その裏には語られることの少ない厳しい現実があるのではないでしょうか。実際に起業して稼げている女性はどれほどいるのか—経済的な成功という観点から見た時、そこには大きな乖離があります。

厳しい数字が物語る女性起業の現実

内閣官房の調査「フリーランス実態調査結果」(令和2年5月)によれば、フリーランスとして働く女性の多くが年収100万円未満であるという現実があります。特に主たる生計者ではない女性が本業として行う場合や、副業として行う場合、年収100万円未満が最も多いというデータがあります。

また、同調査では、フリーランスの抱える課題として「収入が少ない/不安定」(59.0%)が最大の障壁となっていることが明らかになっています。フリーランスとして働く人の収入について満足している割合はわずか4割にとどまるという結果も出ています。

また、民間企業の調査を見ても(株式会社デイトラ「フリーランスの道に関する調査」2021年)によれば、フリーランスの年収が400万円に満たない人が約7割を占めており、年収200万円未満で経済的自立が難しい状況にある女性も少なくありません。単純計算すれば、週5日のパートタイム労働の方がより安定した収入を得られる可能性すらあるのです。

なぜそれでも「起業」という選択肢を選ぶのか

では、なぜこのような厳しい現実があるにもかかわらず、多くの女性が起業という道を選ぶのでしょうか。

内閣官房の調査によれば、フリーランスを選択する理由として「自分のスタイルで仕事がしたい」(57.8%)、「働く時間や場所を自由にしたい」(39.7%)、「収入を増やしたい」(31.7%)といった理由が上位に挙げられています。特に育児や介護との両立を求める女性にとって、時間と場所に縛られない働き方は大きな魅力として映ります。

日本政策金融公庫総合研究所の「2022年度起業と起業意識に関する調査」によると、パートタイム起業家の4割以上が女性であり、これは女性が時間的制約の中で起業という選択肢を模索している現れと言えるでしょう。

※パートタイム起業家:事業に充てる時間が週35時間未満の起業家のこと。本業として勤務しながら副業的に事業を行うケースや、育児・介護などの事情で短時間の事業運営を行うケースなどが含まれる。

さらに、「好きなことを仕事にしたい」という願望も強い動機になっています。しかし、この「好きなこと」が必ずしも市場性を持つとは限らず、ここに大きな落とし穴があります。

「思ったんと違う」—起業が挫折する本当の理由

女性起業家が成功できない理由はいくつかありますが、最も大きな要因は「経営知識の決定的な不足」です。

私が主催するビジネスセミナーでは、女性起業の弱みとして、「ビジネスとして俯瞰する力の不足」「数字に弱い」「交渉が苦手」「経営や財務会計の知識不足」「数年先まで見据えた事業戦略の不在」といった点を挙げて説明しています。

こうした知識やスキルの不足があるにもかかわらず、「行動あるのみ!」「やってみないとわからない!」という精神論だけで起業に踏み切ってしまうケースが少なくありません。しかし、ビジネスには感覚だけでは乗り越えられない壁があります。

特に深刻なのは、マーケティングの基本である「ターゲット設定」や「市場調査」を怠り、自分の趣味や好きなことだけを軸にビジネスモデルを構築してしまうことです。ビジネスモデルを考える際には、「好きな分野×市場がある×自分の強み」というフレームワークが大事ですが、多くの場合「市場がある」という視点が欠落しているように思います。

「甘え」が潜む女性起業の現実

もう一つ見過ごせないのは、女性起業に潜む「甘え」の構造です。

配偶者の収入で生活が成り立っている状況では、起業が「生きるか死ぬか」の真剣勝負になりにくいという現実があります。これは単に「努力が足りない」ということではなく、リスクを取る必要性の薄さが、結果的に積極的な挑戦や大胆な投資を躊躇させる要因になっているということです。

興味深いのは、シングルマザーなど、自身が稼がなければ生活が成り立たない状況にある女性起業家の中に、大きな成功を収める例が少なくないという事実です。切迫感がビジネスへの本気度を高め、市場のニーズと向き合う姿勢を強化するのかもしれません。

「おままごと起業」のレッテルを貼られないために

10年前、私が起業した際、銀行員から「奥さんの起業を応援してくれるなんて、旦那さんが理解のある人でいいですね。感謝しないといけないですね」と言われ、違和感を覚えました。また、ある男性経営者からは「女性の起業はおままごとみたいなもんでしょ」と面と向かって言われたこともあります。

こうした発言の背景には、女性の経済活動に対する社会の偏見もあるかもしれませんが、一方で女性起業家の中に「趣味の延長」「自己実現のため」という位置づけでビジネスに臨む姿勢があることも否定できません。

このようなレッテルを払拭するためには、やはり結果を出すしかありません。具体的には以下のようなアプローチを実践し、結果につなげていくといいでしょう、

  1. 経営知識を体系的に学ぶ
  2. 市場のニーズを徹底的に調査する
  3. 明確なターゲットと独自のポジショニングを確立する
  4. 数字に基づいた経営判断を行う
  5. ネットワークを広げ、メンターを見つける

本気の女性起業に必要なこと

起業の形は人それぞれであり、収入の多寡だけが成功の指標ではありません。しかし、ビジネスとして持続可能であるためには、最低限の収益性は不可欠です。

日本政策金融公庫の調査によれば、起業関心層がまだ起業していない理由として「自己資金が不足している」や「アイデアや知識のなさ」が挙げられています。これは裏を返せば、資金計画や事業計画の立て方、マーケティングの基礎など、起業前に学ぶべき知識があることを示しています。

同調査では、起業する際にあったらいいと思う支援策として「税務・法律関連の相談制度の充実」や「スキル向上」「起業者同士のネットワーク」が求められていることも明らかになっています。

終わりに—リスクを知った上での選択を

起業は働き方の選択肢の一つであり、自分が求める幸せへの近道かもしれません。しかし、甘い言葉だけに惑わされず、リスクや現実を直視した上で判断することが重要です。

起業して成功している人のやり方をそのまま真似ても、必ずしも同じ結果が得られるわけではありません。ビジネスの原理原則を学び、自分の強みを生かせる市場を見つけ、継続的に学び続ける姿勢こそが、女性起業の成功への近道となるでしょう。

現実を知ることは決して夢を壊すことではなく、むしろ、より確かな一歩を踏み出すための準備なのです。リスクや課題を正しく認識した上で起業という選択肢を選ぶことで、結果的に成功確率は高まります。

好きなことを仕事にする、自分らしく働く、育児と両立する—これらの願いを叶えるための道のりは決して平坦ではありませんが、適切な知識と覚悟を持って臨めば、必ず実現可能なものになるはずです。

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    この記事の著者

    合同会社きらりすと 代表 内原絵美

    千葉大学法経学部総合政策学科卒業。群馬県出身。
    製薬会社・広告代理店での経験を経て、2015年にファッションブランドを立ち上げ起業。「第2回創業スクール選手権」にてビジネスプランが最優秀賞「経済産業大臣賞」を受賞。ビジネスの傍ら、地方創生やまちづくりにも携わる。
    2020年に女性起業支援プロジェクト「Lady★Go」を行政と共同で立ち上げ、全体統括・企画・プロデュースを担う。
    現在は、大手企業へのPR戦略立案やライティング、地域資源を活用した新規事業開発など、幅広いコンサルティング事業も展開。全国各地で起業・キャリアに関する講演活動も精力的に行っている。

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